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#音と声の呪力 連続レビュー⑦

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縄文時代の梓弓がルーツである琴は、激しく叩いて演奏される打楽器だった。
イタコの梓弓が、津軽三味線のスタイルを生んだことも知らなかった。
琴が発するパルスにより変性意識となり、神と人をつなぐ琴の音の秘密がだいぶ紐解けてきました。
阿(あ)と吽(うん)、陰陽の宇宙原理で、オンとオフをくり返す。
断続するパルス刺激による音は、古代の叡智。
大勢が神懸かりする楽器として、太鼓は宗教儀礼や祭りなどで重要な役割を演じていくようになった。
そこで、改めてテーマとなってくるのが、「切らないのに切る」という音の秘法です。
ここでやっと、「声」がテーマになります。

 

以下、引用。

 

古代の神歌を調べると、世界的に同じような特徴が見られる。それが「音の揺らし」である。神歌で聞かれるような音を揺らす特徴的な歌い方は「メリスマ」と呼ばれる。この語源は、古代ギリシャ語の「歌」にある。古代ギリシャにおける「歌」とは、娯楽ではなく、神との一体化を果たすための神聖な道具であった。歌だけではない。古代ギリシャにおいては、音楽全体がそのような位置づけになっていた。それは、1章で詳説したところである。”(P130より)

 

メリスマとは初めてきく言葉だけど、近いのはビブラートとか演歌のコブシのように音を揺らすこと。
坊さんのお経もそうだね。

 

以下、引用。

 

音を揺らすメリスマの発声法によって、そのようなパルスの効果が生じるのだ。しかし、その効果を得るためにはコツがある。最初から音を揺らしてはいけないのだ。最初は、安定したまっすぐな音を発し、その音を自分も含めた聴き手の意識に印象づける必要がある。そして、揺れない、まっすぐな音を、自分も含めた聴き手の意識に印象づけた後で、音を揺らしていくのだ。”(P131より)

 

ここは特に重要なので、多くを引用させていただきました。
そして、次に登場するのが成田雲竹氏です。
本書の著者である今雅人氏は、青森県音楽資料保存協会の事務局長。
まさにこの手の研究の第一人者なのです。

 

青森県音楽資料保存協会 ホームページ
http://www7a.biglobe.ne.jp/~amusic/
青森県音楽資料保存協会 掲示
https://9007.teacup.com/ta/bbs
青森県音楽資料保存協会 YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/user/aomorikenongaku/videos

 

以下、引用。

 

民謡もこうした呪術的なメリスマの流れを汲んでおり、揺れのある声で歌われる。民謡は、決して酒場のBGMなどではないのだ。本来は神・宇宙・大自然と人間をつなぐための神歌なのである。そのことについて「日本の民謡の父」といわれる成田雲竹氏が語っている。このことを語る彼の肉声は青森県音楽資料保存協会のホームページで耳にすることができる。”(P137より)

 

待ってました。
こうした展開になるとは知らず、前回の連続レビュー⑥で動画検索して音を聴きながら本書を読んでいきましたが、本にもちゃんとそう書いてある。
今もこうしてMacBook片手に読むスタイル。
そこが本だけではなかなか表現しにくい部分なので、わたしのようなものがこうしてお節介にもほどがある展開をさせてもらってます。
実際、検索したりホームページ内を探してもなかなか見つかりませんでしたが。
たぶんこれでしょう。
それでは、どうぞ。

 


成田雲竹 民謡を語る(8)「津軽の山唄のこと」
https://youtu.be/wClvne39LeA


東通り山唄 成田雲竹 (5)
https://youtu.be/soybURDJuok


ホーハイ節や山唄が外国に招かれている。洋楽家の人たちはこの声をヨーデルだという。この津軽の特色ある唄をその唄い手や自国の人が劣等感にしてるのは非常に残念だと思う。

成田雲竹 民謡を語る(9)「ホーハイ節と津軽山唄について」
https://youtu.be/GKHHjz-T9oM


なぜ私はホーハイ節が良いかというと、あの声の使い方が本当に津軽人らしい唄なんだ。お座敷唄でもない、あれこそ大自然に対抗していくような唄だ。人はよく、民謡は心の故郷だというけど、それではもの足らない。唄はこの大自然から授けられた我々人類の一大権利だ。法律もいかなる馬鹿殿様も制限ができない自由な権利なんだ。この感情の発露とともに民謡があるんだ。ホーっと叫んで返ってくる、津軽のあのホーハイ節はなんともいえないんだな。

成田雲竹 民謡を語る(10)「ホーハイ節こそ津軽の唄」
https://youtu.be/jukpLQqv-4k


ホーハイ節 成田雲竹 (1)
https://youtu.be/N7XMQ4glMtQ

 

うわぁぁぁぁこれほんまにヨーデルや!
えっ、ここってまじで日本なの?って思っちゃうくらい。
この感覚は、石徹白民謡を初体験したときに感じた、ここはどこかの大陸の山岳地帯なのかって思う高地感みたいな感覚にちょっと似てるけど。
こっちはもっと古い、神と人がかけ合う原始の山唄って感じ。

 

そういえば、この夏に初体験することができた高鷲の拝殿踊りで、寺田涼三エカシの唄とお話を聞くことができたのだけど、唄の大切なところはズバリそのことでした。


寺田涼三氏「歌詞の文字に出てこない音を出すところが特徴で、フシといって字のないところを唄います。字のないところを唄わんと、高鷲の唄にならないんです。アーヨイヨイトーは下へ潜り込むように入り、最後に音を上げると良い。唄は返しが大事です。」と。

https://twitter.com/fuhgetsu/status/1428400175999971334【動画】

 

話は戻って、本書では「津軽山唄」は山の神に出会うことを目的とした神歌であるという展開がつづき、あの細川たかしさんが唄う「津軽山唄」が紹介される。


以下、引用。

 

細川たかしさんは、師匠の三橋美智也さんから、「君は民謡を歌うそうだね。これからも、日本古来の民謡を大切に歌い継いでほしい」といわれたそうだ。日本古来の民謡とは、本格的なメリスマを伴った神歌のことだ。細川さんはポピュラーな音楽も歌うが、三橋さんの言葉を守り、本格的なメリスマの民謡をいまも歌い続けている。細川さんの『津軽山唄』は神歌の好例としておすすめしたい。そのメリスマの迫力に度肝を抜かれることだろう。”(P137〜138より)

 

知らなかった。
今までメリスマの言葉も知らなかったけど、細川たかしさんって、そうなんだ。
これは早く、どうしても今すぐききたい!

 


細川たかし / 津軽山唄 -Tsugaruyamauta- 【パワー民謡/一発録り】
https://youtu.be/yRCEgoqELQU


細川たかし / 津軽山唄 -Tsugaruyamauta-(Part2) 【パワー民謡/一発録り】
https://youtu.be/hcMmzNMB-0M

 

いや〜、みなさんがお世辞でベタ褒めしてるんじゃなくて、ホントに心の底から痺れるほど、度肝を抜かれる本物のメリスマの声、すごかったなぁ。
この本を読んでなかったら、こんな素晴らしい唄が日本で古くから唄われてきたことも知らないまま生きていかねばならなかったかと思うと、ネットで何でも知ったつもりになる世の中で、本の重要性を思い知らされます。
つづいて、師匠の三橋さんの唄もどうぞ!

 


イヤーイーージャアー十五や 十五や七がヤエー 十五になるから 山 山登りヤエー♪

三橋美智也津軽山唄 〈青森〉
https://youtu.be/CPMjQB_f_44

 

揺らすことで生命を宿す「魂振り」の作法にも通ずる、音を揺らして命が宿るメリスマの絶大なる効果を生み出しているのが、パルスであるということ。
パルスによって変性意識となり、コチラ側の魔を祓いアチラ側の神威を呼び寄せ、日常のコチラと非日常のアチラを往き来して、境界をなくし、調和する叡智。
この古代人の叡智は、叩き弓の時代から、ディスコやロックコンサートなど現代でも知らず知らずのうちに使われてる。
わたしも太鼓叩きだし、奉納演奏したり、ライブやイベントしたりもしてるので。
この本でより深く理解しながら、これからどんどん活用していきたいです。

 

以上、ここでようやく2章までを読み終えました。
やっここさ半分。
この先まだまだ、3章4章とどうやって進むのでしょう。
めちゃめちゃ楽しみです!

 

 

 

 

 

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