月音(つきのね)∞風音(カヂヌウトゥ)

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#音と声の呪力 連続レビュー③

前回のつづきから。
古代の音楽文化に造詣の深い今雅人氏が全面的に関わったことで、画期的ともいえる内容の本に仕上がっている。
1章はドレミの呪文についてだが、前置きとして、宗教以前の原始太陽信仰があまりにも強烈すぎて、土着性の信仰をキリスト教にすり替えるときに、冬至祭と夏至祭はネックだった。
冬至はもちろんクリスマスとして、太陽の誕生日がそのままキリストの誕生日としてすんなり受け入れられた。
問題は、夏至だ。
夏至の火祭は、キリスト教の聖ヨハネ祭となるのだが、古代の夏至祭そのものである太陽崇拝の呪術的行為がつづけられたのだ。
そのことが、今から1000年ほど前にドレミの呪文へとつながっていく。

 

ドレミの階名を発案したグイードは、音楽理論家として音楽学校の先生であったとしか伝えてこられなかったが、カトリック教会の修道士、つまり宗教家でもあったのだ。
当時の中世ヨーロッパには、古代ギリシャの音楽教程という世界観があり、それは宇宙の響きとして、後の西洋音楽の思想的土台を形成していく。
わたしたちの中にある小宇宙から、大宇宙である宇宙空間の隅々まで鳴り響いている、宇宙全体の営みが音楽である、というのが古代ギリシャの音楽観。
これはまったく、シュタイナーのオイリュトミーではないか。

 

惑星の運動、四季の変化、元素の秩序だった配列といった、響きの河が宇宙の音楽。
大宇宙とミクロコスモスの小宇宙はフラクタルな相似構造で、人間にも同じ響きの河が流れて、その存在を支えている。
この耳には聞こえない、宇宙の営みそのものである響きの河が、わたしたちを取り巻く人間の音楽である。
これが、ドレミの階名発案の底流にあったということだ。

 

古代ギリシャは太陽信仰。
太陽神は、音楽神でもあった。
今の感覚でいう音楽とは、あまりにもかけ離れてるけど、古代ギリシャの音楽は宇宙の調和と秩序を知るための神聖な学問とされていた。
古代ギリシャの音楽観の基礎をつくり上げたのが、紀元前6世紀のピタゴラスだった。
大宇宙と小宇宙を音楽によって一体化し、調和と秩序の完全なる宇宙に感化し、浄化されていくと考えていたのだ。

 

ラテン語の聖歌に込められた歌詞と音を、夏至の太陽が南中高度を上げながら昇っていくように。
太陽に思いを重ねる呪文としてドレミファソラとつないで歌った。
古代エジプトの太陽神ラー。
最も高い音であるラは、夏至の太陽を示す。
太陽への浄化の祈りがドレミの呪文の真意だったのです。

 

つまり、このときはまだシの音が無かったのです。
イードの死後600年ほど経ってから、ラよりさらに高いシの音階が追加されました。
いったいなぜでしょう。
この時代は、ヨーロッパで魔女狩りが大々的におこなわれていた時代と重なる。
キリスト教の弾圧が強まり、夏至の火祭以外の日に異教の呪術をおこなう者は容赦なく処刑された時代。
シは、グイードの発案したドレミの呪文を封じるために仕掛けられた音だったのです。
それまでの聖なる太陽へのつながりが断ち切られ、うまく歌うためのただの道具にさせられてしまった。
6音階でなければならなかったのです。
つまりグイードは、6の数字が持つ力も知っていたのです。

 

世界共通である、赤ちゃんの産声の音は、440ヘルツ。
ここから著者は、産声に注目していたことが綴られ、音楽家としての直感と考察が極まっていく。
ここはぜひ、本の中で読んでいただきたい。
NHK時報も440ヘルツ。
音楽演奏の標準音も440ヘルツ。
産声の音である、ラの音。
ラは階名ですが。
音名でいえばA3。
この音が、やっぱり基本ですね。

 

これで見えてきましたね。
イードさん、ありがとう。
産声のラで終わる、忘れかけていたあの呪文。
これからは、霊的なパワーを増していく夏至の太陽をイメージしながら、ドレミファソラと発声しよう。
死ぬ気で。
いや、シ抜きで!

 

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以上、1章を読み終えたところで終わります。

 

 

 

 

 

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