月音(つきのね)∞風音(カヂヌウトゥ)

◆キーワード:宇宙/巨石/葦船/褌/大麻/真菰/縄文/磐座/神社/修験/民俗/旧暦/お祭り/音楽/アート/映画

考古天文学の4次元から見たパレススタイル土器

土曜は両親の介護関係で一日動き、日曜の昨日は一人単独で遊び回る。
西の吉野ヶ里遺跡に匹敵する同時代の弥生遺跡が近所にある。
清洲朝日遺跡だ。
そこで発掘されたパレススタイル土器の一つに新たな説が浮上し、博物館でなく市民センターで大々的に発表される講演会があるという。

f:id:fuhgetsu:20240227004755j:image

しかも、考古天文学北條芳隆氏による大発表が。
それも無料で整理券なし、当日に来ればいいと。
直前まで予定入れずの生活だったので、やることやったご褒美に、自分の身体を連れて行ったのでした。

f:id:fuhgetsu:20240227004838j:image

講演内容はわたしにとって何ら難しいものでなく興味津々のオンパレードとなるプロジェクターと解説で、北條先生の話し方は丁寧でわかりやすく、心地よくすんなり入ってくるんだけど、その内容は鋭い視点と抜かりない考察による結論で、すでに推論を超えた実証済みの答えなのだ。
異論など挟む余地もない。
そこがすごいところ。

f:id:fuhgetsu:20240227004953j:image

たとえばわたしなんかが、言葉で残されてない古代遺跡から何かを感じたとする。
そのとき、そう思う、という直感だけでは、下手な知識が頭をよぎって邪魔をした単なる勘違いの場合であっても、それが実は間違ってるということに気づくのに相当時間がかかったりする。
だからあんまり本読んだり勉強しないようにしてるんだけど。
例えば、春分秋分の日出が猿投山に向いてたら、もうそれしかないと決めつけ、他の視点は見なくなり、多少ズレが生じても許容範にしてしまいがち。
その誘惑から一旦距離を置き、なぜずれが生じるのかを視点を変えて総点検し、さらなる可能性を搾っていく中で流れが大きく変わることもあるし、他に可能性がないなら最初の直感に従ってそこに落ち着くこともあるでしょう。
今回の話は、赤塚さんと白川さんによる論証がベースにあり、北條さんがさらに固めてまとめあげたような素晴らしいチームワークを魅せていただきました。

f:id:fuhgetsu:20240227005131j:image
f:id:fuhgetsu:20240227005134j:image
f:id:fuhgetsu:20240227005128j:image
f:id:fuhgetsu:20240227005137j:image

そして、長い氷河期が終わり縄文海進の温暖化や弥生の寒冷化は有名だけど、実は弥生時代にも安定した気候の時代が中期まであり、後期から急激な気候変動が起き寒冷化、その最中にこの土地でパレススタイル壺が作られたのだと、そういう生活スタイルや精神世界まで変わる激変の時代に、太陽と月に希望を託して暦を読み、祭りをしたであろうという見解にも涙が出るほど感動。
さらに、八日市地方遺跡の弥生人の鹿の見立てがすごかった。
鹿で暦を表現ってもうアートの世界だし、その絵解きの理解力もきいてて驚きの連続で流石すぎます。
とにかく、以前に吉野ヶ里では冬至満月という発想に切り替えると北内郭の軸線にピタリと嵌まった話をきいていたので、今回の話もすんなりなるほどとなったのでした。

f:id:fuhgetsu:20240227010421j:image
f:id:fuhgetsu:20240227010424j:image
f:id:fuhgetsu:20240227010418j:image
f:id:fuhgetsu:20240227010414j:image

古代は太陽という決めつけより、水稲農耕がはじまった弥生時代には、同時に入ってきたであろう太陰太陽暦として、太陽と月という視点が重要となる。
先日投稿した小正月の話も、元を辿ればこの冬至満月の祭りに行き着くと思ってます。

https://x.com/fuhgetsu/status/1761067935043567862

そしてまた、北條さんがこの朝日遺跡のきっかけとなったのが貝輪だったこと。
赤椀の世直しの、ゴホウラだ。
赤椀とは、つまり、尾張のパレススタイル土器のことだ。
それで、冬至満月の吉野ヶ里と、朝日遺跡は暦でもつながっていたであろうと。
このパレススタイル壺の謎解きはこれですべて解決したわけでなく、実際にどっちの向きで埋まってたかも検証しないといけないし。
赤い弁柄(ベンガラ)の塗料はわかってるけど、それが金生山で採れたてものだとベストだとわかったけど、初の発見となる黒丸の塗料が何であるか。
わたしは天然アスファルトのコールタールとか、漆黒なんじゃないかと思ったけど、専門家が4人並んでもわからない状況でした。
重文となる前に、ぜひ分析していただきその結果を待つしかない。

f:id:fuhgetsu:20240227005353j:image
f:id:fuhgetsu:20240227005356j:image
f:id:fuhgetsu:20240227005349j:image
f:id:fuhgetsu:20240227005359j:image

そして、最後に自論ですが。
パレススタイルと名づけられた赤彩土器。
いずれにしても、古代において死生観の聖なる色としての朱や赤という特別な意味を感じます。
土器や壺という形状からも、このカタチには母なる大地の子宮という意味もあるだろうし。
そこにしるされた紋様が暦であるだけでなく、縄文由来の宇宙哲学1のまわりの12と、その収束と拡散エネルギーの陰陽を現しているシンボルとも受け取れますね。

f:id:fuhgetsu:20240227005504j:image

楽しいことは、どんだけ考えても終わりません。
岐阜でこれまで関わってきた、金山巨石群朝鳥明神冬至とも深く関わる考古天文学の世界。
恵那蛭川での新たな巨石群での調査もこれからだし、とにかくまだまだ楽しみがいっぱいすぎて困ります。