月音(つきのね)∞風音(カヂヌウトゥ)

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日光修験と星宮神社のイワサクとネサク

これまで星信仰といえば、各地にある妙見信仰で北極星や北斗七星を祀ったり、尾張庄内川沿いにある星神社などで天津甕星や天香香背男を祀ることはだいぶ調べ歩いた時期があります。
しかし、尾張西部にある赤星明神=星の宮になぜかニギハヤヒが祀られていることが長らく謎でしたが、その関係で根裂神が単独で祀られていることを最近になって知りました。
そして美濃の八百津にある星宮神社に天香香背男が祀られてましたが、明治以前は虚空蔵菩薩で、それは日光修験から来ているらしいことがわかってきた。

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日本全国にある星宮神社は、ほとんどが日光修験の栃木県に集中しており、その数は計り知れないほど。
その星宮神社には天香香背男ではなく、磐裂神と根裂神がペアで祀られているパターンが数多く見られます。
片方だけの場合もあったり、経津主神や建御雷神が並祭されたり、やはりこれがまたよくわからない。

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こういうカミさま関係の調べものは、漢字や名前がごちゃごちゃしている上、神話そのものが複数存在し、調べれば調べるほど支離滅裂となって混乱する。

そこに整合性を求めず、すべてがヒントとなっていることを前提に、少しずつでも前に進めてみよう。

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まずは、なぜイワサクとネサクが星信仰の神となったのか。

石拆神と根拆神(古事記
磐裂神と根裂神(日本書紀

記紀神話に出てくるこの二神が、まずはどんな神であるのか見てみよう。

カグツチを産んだイザナミのホトが焼かれ死んでしまったことに怒り狂ったイザナギが十拳剣=天之尾羽張カグツチの首を斬り、殺された死体からは神々が生まれ、剣から滴り落ちる血からも神々が生まれました。

まず、剣の先についた血から石拆(いわさく)神と根拆(ねさく)神と石筒之男(いわつつお)神の三柱が生まれる。

次に、剣の鍔(つば)についた血から甕速日(みかはやひ)神と樋速日(ひはやひ)神と建御雷(たけみかづち)神=建布都(たけふつ)神の三柱が生まれる。

古事記では、石拆神と根拆神と石筒之男神甕速日神樋速日神建御雷之男神の六柱が生まれる。
日本書紀第五段では、磐裂神と根裂神と磐筒男神磐筒女神経津主神の五柱が生まれる。
また、日本書紀第九段では、天之尾羽張神の子が甕速日神で、その子が樋速日神で、またその子が建御雷神であると、並列ではなく親子四代で記されている。

そして最後に、剣の柄についた血から闇淤加美(くらおかみ)神と闇御津羽(くらみつは)神の二柱が生まれる。

こうして、記紀では十拳剣から神々が生まれたことになっており、農耕や製鉄に関わる神話であるなど様々な解釈がなされてきた。
通説では、いったい何処に星神話が隠されているのか路頭に迷ってしまう。
続いて、甕速日神樋速日神を祭神とする神社を見てみよう。

佐肆布都(さつふと)神社(長崎県壱岐市芦辺町箱崎大左右触)
※建御雷神と甕速日神樋速日神経津主神ほか

斐伊神社(島根県雲南市木次町里方)
※伊都之尾羽張命のほか相殿には斐伊波夜比古=樋速夜比古=樋速日神甕速日神カグツチなどが祀られている

新田神社(鹿児島県薩摩川内市宮内町)
※ 境外末社の九樓(くろう)神社に甕速日神が守公(しゅこう)神社に饒速日神が祀られている

蜂前(はちさき)神社(静岡県浜松市北区細江町中川)
樋速日神甕速日神と建御雷神の三柱

八幡神社/一条八幡宮山形県酒田市市条字水上)
建御名方神甕速日神経津主神と建御雷神と樋速日神を合祀

これで何がわかるかというと、あまりピンとこないかもしれませんが、甕速日神饒速日神を並列に祀る新田神社があります。

甕速日と饒速日のハヤヒ。
この速日とは何か。
甕(ミカ)がカメであるとか、饒(ニギ)は賑々しいとか、漢字の解釈に惑わされてはいけません。
単なる当て字です。
ミカという言葉、ニギという言葉に意味があり、ハヤヒという言葉に意味があります。
ミカは、天津甕星や建御雷神=武甕槌神のミカとも共通します。
そして、ハヤヒは流星の可能性があります。
ニギハヤヒを太陽神とするより、隕石に関する星信仰の神であることも頭の片隅に置いておかないといけません。
その隕鉄で古代の剣がつくられたことでしょう。
石上神宮主祭神布都御魂(ふつみたま)という剣に宿る神です。
日本書紀のフツミタマ剣は、経津主神と建御雷神が葦原中国の征服に用いた剣で、初代神武天皇が熊野山中で窮地を脱する時に使われました。
そのフツミタマ剣を神宝とする鹿島神宮には建御雷神が、香取神宮には経津主神が祀られている。
それぞれにある要石は本当に地震を抑えているのか、それとも何か別の目的があるのではないか。

かなり長文となったわりには、答えなど見つからず終わりそうですが、ここには書ききれないけど何か光のようなものが見えはじめてます。
理路整然と言葉でまとめる前に、まだまだあちこちに星神がたくさんおられますので、近隣の気になる土地に出かけては、このまま星巡りを続けようと思ってます。

 

 

 

 

 

※追記(メモ)

 

カタカムナ ウタヒ【第28首】

イキノヒトツネ
イククヒノツチ
カグナツチ
イハサクネサク
イハツツヌヲ

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カタカムナ ウタヒ【第40首】

カムナガラ
トヨウケヒメ
イカツチヒビキ
マノネカタカムナ
イハサクネサク
イハツツヲ
マリツラネ
ミカヒハヤヒヌ
ケイカツ
タケフツノムスビ

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