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これがアメリカ映画とは #MINAMATA

 

1日の映画の日に、MINAMATAを観てきましたよ。
カミさんと二人で。
いつの間にか夫婦50割はもうやってなかったり、映画の日がまた100円の値上がりしてたけど。
公害もののドキュメンタリー映画はなかなか受け入れられ難いところを、ジョニーディップやってくれました。
熊本のチッソ
日本人ですら、水俣病の名だけ知っててその実を知らない。
昔も今も変わらないだろう。
だって、同じ日本人で、生々しすぎるっていうのもある。
でも、それだけじゃない、元々、本質を見ようとしない癖が明治以降の日本にあるように思う。
しかも、高度経済成長の当時の日本で、今の311原発事故やコロナ騒ぎについての報道ぶりを見てもわかるとおり、国内では見てみぬふりや、知る由もない状況だったことでしょう。
戦争だって、同じ状況の中ではじまって、その後の日本社会はまったく成長していない、中身はそのままで表の色をちょっと塗り替えただけの、見た目だけ新しいポンコツ現代社会に生きている。
そんな当時、海外のフォトジャーナリストが水俣に入ったことで、時代のマジックというか奇跡が起きる。
強いものが弱いものを金で支配する、世界中どこにでもある話。
その信実が世界の目に晒されたとき、水俣病原告団の裁判が勝利する。
そんな実話を元にした映画だけど、お恥ずかしながらユージンスミスさんも知らないし、ライフ誌のことも知らなかった。
いや、この映画で知れてよかった。
しかも、監督も知らないし、あまり期待してなかったけど、映画としてもとてもいい映画でした。

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写真は1000の言葉よりも。
絶望的な危険に晒され、ユージンが目覚める。
そして、心を開いて住民に寄り添い、躊躇っていた患者家族も、写真に撮られる覚悟が芽生える。

 

写真は撮られる者の魂を奪う。

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でも、撮る者の魂も奪うんだ。

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そんなセリフのあと、本当にそうなっていく。

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水俣病の患者役とか、役者もすごいよかった。
ときおり、当時の実写映像や、本物のユージンスミスが撮影した写真もオーバーラップして見せていく。
母親に優しく抱かれた、ともこの入浴シーン。
その写真を撮るユージン役のジョニーディップも、怪我で包帯巻いた手が上手く動かせず、水俣病患者が水俣病患者を撮影しているような凄い力強さと優しさに溢れ、わたしの涙腺は緩みまくって涙が止まらなくなっていた。
いやぁ、映画で泣くのは、歳をとるにつけ年々多くなるのだけど、今回が一番ポタポタと流れ落ちた。
そんな写真を暗室で現像して、絵が浮かび上がってくる瞬間も、なぜか涙が溢れ出る。
ユージンの手もきっと震えてただろう。
そんな想いまで伝わってきた。
まるで現代でも、同じような理不尽なことがあまりにもたくさんあり、それらと重なって言いたいことなど山ほどあるけど、思ったり言うだけじゃダメだ。
ユージンや反対運動のリーダー役の真田広之のように、命がけで世界を変えてきた人たちがいる。
それなのに、またもとに戻るというか、コロナ騒ぎが緊急事態になったり全面解除したり、本当に前に進んでるとは思えない。
ここでは、それをとやかくいう言葉が見つからない。

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しかし、これがアメリカ映画とは。
ちょとバカにしてましたが反省します。
アンドリューラビタスさん。
こんないい映画を撮れる監督がアメリカにもいるんですね。
テレビに追いやられる時代の雑誌のジャーナリズムと広告のせめぎ合い。
アポロの月面着陸を捏造した裏話とか。
映画のラストに、世界中の公害に苦しむ人々のシーンが流れ、日本の311原発事故もしっかり出てきた。

 

ただ映画のチカラに感謝してる。
だから次に上映予定の、今度は日本人が撮った水俣病ドキュメンタリー映画水俣曼荼羅」を観るのが楽しみである。
大好きな、原一男監督作品。
しかも6時間超えの超大作。
いや、外国産のMINAMATAが1人の写真家をテーマに数年のドラマを描いたロードショーだったの対し、国産の水俣曼荼羅はその後、裁判で勝利したはずの水俣がまったく終わったわけでなく、今でも苦しんでいる、長い長い時間を記録し続けてやっと完成にこぎつけた矢先のコロナ騒ぎで延期していたような状況で、ミニシアターで上映されるドキュメンタリー映画
でも、こうして先にMINAMATAが上映され、その後に続け様の上映となったことは、偶然であっても意味がある気がします。
6時間超えが長いのではなく、水俣病で苦しむ人たちの時間からすればほんの一瞬の映画でしょう。
それを心して見なければ、同じような悲劇はいつ誰のところにやってくかもわからないのだから。

 

 

 

 

 

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