セミの脱け殻を、空蝉(うつせみ)とも呼ぶ。
虚蝉とも書き、晩夏の季語になってます。
生まれて初めて地上に出て、太陽の光を浴びたセミの蛹は、そこで生と死を超えた完全変態のメタモルフォーゼをし、まったく違う世界を生きるために翅を持ち、空をも飛べる身体へと生まれ変わる。
街中でも自然とは切り離されてないことを知らせるセミの鳴き声。
途方もなく長い年月、この目には見えない地面の中にいったいどれだけの命が隠れ潜んでるのか。
人間だけのコンクリに覆われた都会で、僅かな地面のある街路樹や公園の地下に、それでも命はつづいているのだ。
ウツセミとは、古語のウツシオミ(現し臣)やウツソミ(現し身)が訛った言葉で、この「現世に生きてる人間」のことを指していたのだ。
つまり、現世のこと。
現臣(うつしおみ)が現身(うつしみ/うつそみ)となり、空蝉(うつせみ)となった。
セミの脱け殻は、空っぽである。
現世もまた、無常である。
儚いこの世に、常はなし。
そんな、とても深い意味のある言の葉なのです。