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#音と声の呪力 連続レビュー⑩

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縄文遺跡から、様々な形の石笛(いわぶえ)が見つかってます。
最初は、あるとき穴のあいた石が風に当たって鳴るのを見たり、拾い上げて吹いてみたりしたのでしょう。
三内丸山遺跡からは、ヒスイに人工的な穴を開けた、貫通孔の石笛も出てきます。
自然石の穴は貫通してないことが多いけど、自然石の貫通孔石笛が貝塚から出てきたりもする。
難易度が高くとも、何年もかかって練習すれば、貫通してない石笛より高度に動物の鳴き声のような音が出せるようになるときいたことがあります。
どんな音がするかご存じない方も多いかと思いますが、録音された音を聴いても可聴域を超えてるので、ぜひ生で聴く機会をつくってください。
めちゃめちゃ甲高い響きを持った、ただの高音ではなく、非常に濃厚な、厚みや奥行きがあり、かつ力強い、なのにとてつもなく優しいという、なんともいえない複雑な高音域が発せられ、そこに高次倍音が渦巻きのように絡み合って成せる音だと思います。
このあと出てくる能管の音を聴いた後で、石笛の音を聞き比べることにしますので、ここではこのまま話をつづけます。

 

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なぜ、このような音が必要だったか。
たとえば、縄文時代の深い森に住んでたとします。
もし夜の森で、この笛を吹いたらどうなるでしょう。
野生動物たちが反応するでしょうし、目に見えないアチラ側も反応する。
縄文遺跡のヒスイの石笛は、高貴なシャーマンの遺体近くから出てきました。
この石笛を夜に吹くとなれば誰でもいいわけでなく、特別な力を持ったシャーマンでないと魔にとり憑かれるおそれがあったのかも。
だから昔からよくいわれる「夜に口笛を吹いたら蛇が来る」という言葉があり、夜の笛はやめなさいとわたしも子供の頃に親からよく言われたもんです。
蛇とは、もちろん爬虫類そのもののことではなく、古代人にとってはカミさまとして、自然界に流れる大きなエネルギー体とか、目に見えない世界との交流技術として石笛を吹いていたのだと思う。
古神道では「鎮魂帰神」といって、石笛を吹いて神霊を呼び迎える。
音を立てて息を吹き、口笛のような音を相手の背後から吹きかけることによって霊を呼び出そうとすることを「息吹き」と呼んでいる。
京都の地主神社など、神事で石笛を使う神社があります。
それは、神降ろしのための道具として。
そうした神社では石笛を吹くものを制限したり、とても慎重に扱っています。

 

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能で使っている笛を、能管といいます。
見た目は雅楽龍笛とそっくりですが、目的が違うので、三味線のときのようにある改良が加えてあります。
ヒシギという、石笛そっくりな甲高い音を発する、神降ろしの笛とも。

 

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だから堅い材質の石笛に近づけるため、鉛(なまり)が埋め込まれたり漆を何度も塗って塗り固めてあり、ヒシギと呼ばれる甲高い音を出す、神降ろしに特化した楽器に仕上がっているのです。
こうして、縄文の石笛から能の能管という笛ができました。
この脳天を貫く高次な響きを、高次倍音といいます。

 

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最初から高い音の上に倍音が乗り、その上に、そのまた上にと、耳には聞こえない2万Hz以上の音域まで、倍音が重なって響きわたる。
その不思議な、能管の特徴や使われ方を、わかりやすく解説している動画がこちらです。

 


笛 「能管」 ~伝統音楽デジタルライブラリー
https://youtu.be/myKMqKBcaUI

 

次は石笛を吹きながら、能管のヒシギという鋭い高音の源が石笛にあるということを、とてもわかりやすく解説してくれる、とてもいい動画です。

 


笛小話 ヒシギ ~伝統音楽デジタルライブラリー
https://youtu.be/KtEYgjQ1y1s

 

ここまで本書を読みつづけながら、ある石笛の演奏シーンを思い出したり、ある映画のことがわたしの中で重なって出てくるので、ここで脱線します。
2006年の映画「ガイアシンフォニー地球交響曲第六番」で、龍村仁監督は「虚空の音」をテーマに決めたという。
サブタイトルは「全ての存在は響き合っている」であり、「ナーダ ブラフマー = 世界は音なり」という真理を再発見し、「音を観て、光を聴く」ことが、第六番の旅。
本書に通じるものがあり、すぐにイメージしました。
この第六番にはよく知ってる奈良祐二さんも出てきますが、KNOBさんと雲龍さんも出演されてます。
https://www.gaiasymphony.com/bu/co_guide6.html

 

雲龍さんは20年くらい前に、猿田彦神社のおひらきまつりで細野晴臣with環太平洋モンゴロイドユニットの奉納演奏で出会い、そのご縁からKNOBさんにも出会いました。
声と楽器、ディジュリドゥなどいろいろ出てきますが、5分過ぎた辺りからKNOBさんと雲龍さんの吹く石笛の高次倍音が重なって、空間に螺旋を描くようなうねりが感じられます。

 


「あめつちのはじめ」 雲龍 UNRYU × KNOB 2019.7.28
https://youtu.be/Ta0mhiNDXtY

 

笛奏者である雲龍さんは、鼓の家に生まれながら幼少の頃より穴の空いているものはすべて笛にしてしまうほどで、石笛に能管、古代の和笛、インディアンフルートと様々な笛を奏でる方。
http://shana-records.com/

 

そんな常に響きを意識している雲龍さんは、この生かされている地球とつながるために、9年前から土を丸めて穴を開けた小さな笛を焼いて、そこに息を吹きかけ、呼吸というものを意識して笛を吹いているそうです。

 


今を生きようとする人たち インタビュー05 《「自ら土を丸め、命を宿す”息吹之笛”とは...息を吹き込み、音を響かせ、地球と繋がり自身とも繋がる」雲龍さん》
https://youtu.be/8NUsKOlm4m0

 

登り窯で息吹之笛という陶器の笛を創作する活動をされており、岐阜で地球交響曲第六番の上映会もしてみたいなぁと思ったり、雲龍さんを呼んで音をききながらのワークショップとか笛の集いができたらなぁと思っていたところです。

 


雲龍・息吹の笛 増穂登り窯
https://youtu.be/91_IS6lBMgM

 

映像はありませんが、大自然の中で息吹之笛を吹くと、木立に響きわたる高次倍音は鳥肌ものです。

 


雲龍【後編】 龍舞 STUDIO伽藍裡 オープニングセレモニー
https://youtu.be/Imb4_jnekc8

 

それでは、今日はここまで。

 

 

 

 

 

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